肩の痛みとは
肩の痛みが強くて腕が上がらない、動かないなどは日常生活に大きな影響を及ぼします。例えば、上の棚に手を伸ばす、洗濯物を干す、電車やバスのつり革に掴まる、衣服の着脱などが思うようにできなくなってしまいます。また、肩の痛みは、スポーツによっても起こりやすいとされます。肩の痛みの頻度や度合い、どのような動作で痛むのか見極めて正しい診断や治療を行う必要があります。
肩のメカニズム
肩関節は上腕骨の丸い部分(上腕骨骨頭)がお皿のような骨(関節窩)に収まる構造です。この関節窩は肩甲骨の背面にあり、浅いくぼみを持っています。この浅いくぼみによって、肩関節は可動域が非常に広く、腕を自由に上下左右に動かせることができます。
上腕骨骨頭を覆うのは腱板と呼ばれる4つの筋肉です。これらの筋肉は平たい板状になっており、腕を動かす際に腱板が収縮することで上腕骨骨頭が関節窩に引き寄せられ、肩関節がスムーズに動くよう促しています。
肩関節部分の骨にズレや変形が生じると、肩の動きが制限されるばかりか、痛みが生じるだけでなく軟骨や腱板にも問題が発生します。このような骨の問題は、肩の可動域そのものにも影響を及ぼし、日常生活で当たり前に行っていた動作が困難になることがあります。
肩の痛みの主な症状
肩を使う動作をすると肩に強い痛みが生じます。腕を上げにくくなるなど、肩の痛みによって徐々に肩を動かす動作を行わなくなることで、筋肉も硬くなって可動域が狭くなってしまいます。
肩に異常を生じる原因
原因は様々ですが、怪我による外傷、加齢などの複合的な問題によって引き起こされるもの、原因がよく分からないものの3種に分類されます。
加齢による変性
加齢に伴って、肩関節周囲の組織に異常が起こります。
特発性の異常
一般的に四十肩・五十肩と呼ばれる症状です。40代、50代に多くみられる症状で、突然強い痛みや炎症が起こり、腕を上に上げられなくなってしまいます。明確な原因が特定できないのが特徴です。
肩の痛みの代表的な疾患
脱臼
肩関節は、上腕骨骨頭と関節窩が擦れ合って動く構造になっています。可動域を広くとれる半面、外れやすい構造にもなっています。このため、外部からの強い衝撃などによって脱臼は起こりやすいとされています。脱臼すると、その周囲の筋肉や関節包、靱帯などに損傷が起こり、治りが悪くなることがあります。特に、変形性肩関節症になると、脱臼を繰り返し起こすため、適切な治療とリハビリテーションが必要になります。
石灰沈着性腱板炎
肩関節内に炎症を起こすリン酸カルシウム結晶の沈着が急激に起こり、痛みが生じる状態が石灰沈着性腱板炎です。症状は、四十肩・五十肩に似ています。急性期と慢性期からなります。急性期は約1カ月程強い痛みと炎症が続きます。慢性期になると、痛みは軽減しますが、長期間肩を動かさなかったことで筋肉や靱帯が硬くなり、さらなる痛みを起こします。病状が進行すると治療困難となるため、急性期のうちに治療を開始することが重要です。
四十肩・五十肩
40代、50代の中年以降によくみられる症状です。突然激しい肩の痛みとともに肩を上げにくくなってしまいます。石灰沈着性腱板炎と症状が非常に似ていますが、治療方法が異なるため正確な診断と適切な治療が必要になります。
腱板損傷・腱板断裂
加齢によって肩周囲の筋力が弱っているのに関わらず、肩を酷使することで筋肉が擦り切れて損傷や断裂を起こす状態です。突然激しい痛みに襲われた後、腕が上がらなくなる症状が現れます。加齢のほか、野球やバレーボールなどのスポーツがきっかけとなって起こることがあります。
肩こり
首や肩周囲の筋肉の血行不良のほか、筋肉の緊張や強張りによって肩こりが起こります。痛みの度合いによって、痛み止めや筋肉のハリをほぐす治療を行います。肩こりは、筋肉の痛みによって起こるため、基本的に骨には異常は見られません。ハイドロリリースやトリガーブロック注射のほか、温熱療法などの物理療法や理学療法を用いて治療することがあります。
野球肩
小さいお子様から成人の幅広い年代で、野球の投球動作などを熱心に練習するなどで肩に痛みが起こることはよくみられます。肩のどの部分に痛みが生じているのかをしっかりと診断して治療方針を決めます。
肩の痛みの診断
肩関節など状態を詳しく確認するためには、画像検査が重要となります。
レントゲン
レントゲン画像から、骨の変形や異常の確認、肩可動域範囲や動作時の骨の擦れ具合など構造上の確認を行います。
超音波検査
肩の筋肉の炎症や腱板断裂などの有無を調べます。
MRI検査
肩関節内の腱板や筋肉、軟部組織の状態を確認します。
MRI検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介します。
肩の痛みの治療
薬物治療
痛み止めの薬、貼り薬、関節内注射などを行い、痛みの緩和を図ります。
安静
強い痛みがある場合は、肩に負荷をかけないよう安静に過ごしていただきます。腕を動かせない場合は、腕を固定して肩の安静を確保する方法もあります。スポーツが原因で痛みが起きている場合は、しっかりと安静期間をとって機能を回復させます。
運動器リハビリテーション
理学療法士の指導で、ストレッチやリハビリテーションを行い、肩の正しい動きを確認します。筋力強化と肩や腕の正しい位置の確認、再発予防について丁寧に指導します。
肩の痛みでお悩みの方は
当院にご相談ください
当院では、肩の痛みを早急に軽減し、機能回復を図るためのストレッチやリハビリテーションを行っております。筋力強化と再発予防のためのトレーニングに取り組んでおります。肩の痛みでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。